32話「外戚ミン家の終焉」
ミン兄弟の前に賜薬が運ばれてきます。
「王様の命令ですか」
「いいえ、私の決定です」
ミン・ムヒュルは、薬の入った御膳をひっくり返します。「世子様は我々の潔白など信じていません。なぜ殺そうとするのです。忠心を捧げれば見捨てないとお約束になった。血の盃まで交わしたではありませんか」
「あの時は本心で?」
「叔父上は私を騙した!下三道(ハサムド)の隠し持っていた土地は何です?」
ミン・ムフェ「いずれは頂く土地でした。先に手にしただけです」
「報酬と着服は全く別です」
ミン・ムヒュル「当然の報酬だ。報酬のため、忠心を捧げた。朝鮮の建国は決して王だけの力ではない。ミン一族の功労があって実現したのだ」
「要するに権力が欲しかったのですね」
ミン・ムヒュル「生きるためには仕方のない事。力がなければ非業の死を遂げた兄や大勢の功臣のようにいつ殺されるか知れぬ」
「命が惜しいか」
「死ぬ理由などない。しかし、命は諦めるしかなさそうだ。可愛い甥には叔父を救う気などない。父王が怖くて、我々を救う決断など到底できんだろう。自害するつもりはない。自害して罪を認めることなど望みはしない。我々が邪魔ならお前の手で殺せ。そうすれば、お前ら父子は、罪の意識を感じるだろう」
世子は、二人を遠地に送り、賜死させると決めます。
「結局お前も父と同じだな。自らの手で人を殺し、血塗られた王座に座るのだ。お前も刀で人を押さえつけなければ絶対に権力を手にすることはできない」
二人は連行されていきます。
「二人に死を命じたことを決して忘れてはならん。今後はむやみに心を開き側近を置くな。王には叶わぬ夢だ」「友のいない孤独に打ち勝てる者それが王なのだ」
世子は、涙を流します。
敬寧君は、自分のせいで二人が命を落としたことを悔い、忠寧大君に会いに行きます。「自分が受けた傷や悔しさより、他人の命を大切にできるとはどうしてですか?たった13歳だったのに」
忠寧大君が上の叔父二人の罪を知りながら、二人を守ったことを思い出し、敬寧君は聞きます。「13歳だからできたのです」
「もう意地は捨てました。20年近く、日陰の身で生きていれば一度くらいは仕返ししたくなるものです。仕返しをすれば楽になれると信じていましたが、むなしいばかりです」
忠寧大君「世子様が心配です。13歳の時の私や、今の兄上(敬寧君)より辛いのでは。いつも決断を迫られる立場にいるのは世子様だからです」
叔父を失っても、世子は私田京畿の原則廃止に向かって進もうとします。
「服従する臣下は忠臣、背く臣下は奸臣。奸臣をどうするかは、十分察しがつくだろう」
キム・ジョンソは「臣下の進言を聞かなければ、暴君と呼ばれる」と言いますが、世子は「世子に不敬を働いた罪」としてキム・ジョンソの罷免を言い渡します。
ファン・ヒも、土地制度改正を諦めること、官吏の罷免を取り消すように言いますが、世子は「信じてくれると言ったのに、なぜいつも味方してくれないのだ」とファン・ヒの話すら聞きません。
イ・スはユン・フェに「鏡城に行ってはどうか?」と言いますが、ユン・フェは「王子様をけしかけておいて、急に王様が怖くなった。王子様が貫こうとした志をお守りできなかった。そんな自分自身が許せない。王子様に会う資格などない」と言います。
イ・チョンからの書状で、イ・スクボン兵判がカン・サンインからの報告を自分に上げなかったと知った世子は、「自分を裏切ることがあればそなたを地獄に送る」とスクボンを脅し、チェ・ユンドクを罷免し、後任はイ・チョンにするよう命じます。
チェ・ユンドクが罷免され、イ・チョンが後任になるやいなや、イ・チョンは女真族の土地に向かい大砲を撃ちまくります。当然怒った女真族も国境を越え、村は戦場と化し、村人は死傷します。
女真族から矢文が届きます。「先に挑発してきたのは、朝鮮だ。我々は総力を集結して朝鮮と戦いに応じる」怒ったイ・チョンは、文を燃やしてしまいます。
罷免されたチェ・ユンドクが村を去ることになり、村人は泣いて悲しみます。
ユンドクはヨンシルに「大砲だけでなく矢を作った方が女真族との戦いには役に立つ」とアドバイスします。
村を去ったと思われたユンドクは、戦に備え、防空壕を作り避難訓練をし、子どもを励まし、男には戦いに関する助言をします。
それを見た忠寧大君は、ユンドクに「自尊心はないのか!仲間も国もそなたを捨てた。そなたの忠誠心など誰も認めていないのだ。なのになぜここにいる。馬鹿を見るだけだぞ」と声を荒げます。
ユンドクは忠寧大君を殴り、「そんなに知りたいか。お前のような人間がいるからだ。わかったか!」