52話
任房がなくなっても行商人の精神はなくならない
都承旨に連れられ、縄をかけられたボンサムが任房(イムバン)にやって来ます。
「決起してはだめだ。俺は自分の意思で義禁府に出頭した。その思いをわかってくれ。俺が己の命を惜しんで、仲間を危険に晒すと思うか!
任房がなくなれば、行商人の精神までなくなってしまうのか?商いで民の暮らしを豊かにし、困難の時には仲間同士で支え合い助ける、そんな行商人の精神はこれからも残るだろう。だから悲しくはない。
皆の心の中に行商人の精神が息づいているなら俺は喜んで死ぬ。怖くも悔しくもない。
任房は行商人が共に生きるために作られたものだ。手を取り合って死ぬためではないんだ。皆の手は、朝鮮の民を豊かにするための品物と家族を養うための金を握るべきだ。人を傷つけ〇すための武器など決して持ってはならない。武器をすてるんだ。京畿道(キョンギド)任房 接長(チョプチャン) チョン・ボンサムの最後の命令だ」
マンチが武器を捨て、行商人達もそれに続きます。
ボンサムの出した条件
獄中に戻ったボンサムは都承旨に3つの願いを申し出ます。
1つ目。私以外には、日本人が〇された件について誰にも責任を問わないでください。
2つ目。行商人達には、都承旨様に雇われるか、ユギジョンで働くか、自ら商いするか、各自に決めさせてください。
3つ目。銃で撃たれて捕まったチェ・ドリを直ぐに放免してください。治療が必要です。
チェ・ドリはソンドルに「〇ぬときはボンサムの側にいたい」「自分がすぐに〇ぬのはわかってる、ボンサムには言うな。悲しむから」と言います。
ボンサムは「条約で認められた日本との交易を意図的に妨害し、配下の者に命じ、日本人商人の命を奪った。両国の関係を悪化させた重大な罪」として絞首刑を言い渡されます。
ケトンは王妃にボンサムの命を救うよう頼みに行きますが、国際問題に発展したため王妃でもどうする事ができません。
身代わり
ソンドルがチェ・ドリを牢から連れ出し、ケトンの前に連れて行きます。
「罪人の中に身代わりになる者がいれば、チョン客主を救えるかもしれません」と、ケトンはとんでもない事を頼みますが、チェ・ドリは「ボンサムが生きられるのなら、俺は喜んで〇ねる」とボンサムの身代わりを引き受けます。銃で撃たれた自分はもう長くは生きられないからと。
牢に戻ったチェ・ドリはボンサムに最後の挨拶をし、牢から解放されます。
「お前がいたから俺の人生は本当に楽しかったよ。童蒙庁(トンモンチョン)で初めて会ったときから俺は可愛いボンサムがずっと大好きだった。友達だけど弟みたいに思ってた」
「俺は童蒙庁でドリ兄貴に会ったから、今こうして獄にいるんじゃないかな(笑)でも兄貴と歩んだ人生は凄く楽しかったし、心行くまで遊べたよ(笑)」
「お前の最期を見送るって言ったけど、やっぱり先にここを出るよ。すまないな、本当に」
「ドリ兄貴、ありがとう」
20年間、針と糸のように一緒にいた二人です。
一人になったボンサムのところへ酒を持ったケトンがやって来ます。
「俺はお前から言い表せないほどの恩を受けた。一方でお前を強く恨んでる。とにかく、また愛しい人に会えると思えば何てことはない。酒でも飲んで祝わないと。恨みはこの酒で洗い流すことにする」
「始めからそばに私しかいなかったら、私の望んでいた通りにあなたの心を奪えたかしら」
「俺は感謝の気持ちとお前から受けた恩を胸の奥に秘めて旅立つ。ケトン、善良な人間になれ」
酒を飲んだボンサムは倒れます。
「本当にごめんなさい。勝手な真似をして」
犠牲になるチェ・ドリ
チェ・ドリは「ボンサム」として死刑執行の場に連れてこられます。死刑囚の人相書きはソンドルが書き換えました。ソンドルの方を何度も振り返りながらチェ・ドリは死刑台に進み、刑が執行されます。ソンドルは声を上げ泣きます。
夜になり、「チェ・ドリ」の遺体が運び出されます。銃で撃たれた傷が原因で先ほど〇んだと。その近くに駕籠を運ぶケトンとソンドルの姿が。
都承旨(トスンジ)が二人の企みに気づきます。官吏の買収と罪人のすり替えは重罪ですが、ケトンはボンサムのためなら死をも恐れません。
朝になりボンサムは目を覚まします。ボンサムが叫ぶと、マンチ、コムべ、ウォルが駆けつけます。
「ドリ兄貴は?」ボンサムは誰も答えない様子を見て、チェ・ドリが自分の身代わりになったと察します。親がいない自分の親代わりになり、親友になり、支えてくれたチェ・ドリを想いボンサムは空に向かって叫びます。
15年後
15年後、富裕層の人々は髷を止め洋服を着ていますが、民は相変わらず貧しい生活をしています。
ソンドルは鉄道事業に手を出そうと土地を買い占めようとします。
土地の所有者に会いに行くと、所有者はケトンでした。ケトンはほとんどの土地や財産を処分しボンサムの赦免のために使ったと貧しい暮らしをしていましたが、本人も知りえないところで、まだ土地を所有していたようです。
土地を売ってほしいと言うソンドルに、15年前にボンサムを救う時に大行首にはお世話になったからとケトンが土地を譲ろうした矢先、ボンサムが現れます。3人とも15年振りの再会でした。
ボンサムはソンドルよりも先に、鉄道敷設予定地を買い占めていましたが、理由は鉄道を作らせないためでした。
「鉄道が通れば商品が円滑に流れ、朝鮮の経済がより早く発展する。民も豊かになる」というソンドルに、ボンサムは「その通りだ。だが今はまだその時期ではないと思っている。鉄道が敷かれればそれだけこの国の資源が済物浦(チェムルポ)から海外に流出する」と答えます。
ソ「鉄道建設は時代の流れだ。予定地を買っても時代の流れを止めることはできない」
ボ「時代の流れに逆らうつもりなどない。ただ、今、鉄道ができれば朝鮮全土を渡り歩き、道で生まれ道で〇ぬことを望む俺たちの仲間は、行商人達は一体どうなる。仲間たちに少しでも今の状況に適応し、世界の商人と争える力をつけて欲しい」
ソ「任房閉鎖から15年だ、まだ適応できないやつが、この先、商人としてやっていけると思うか」
ボンサムとソンドルが再び同じ方角を見ることはありませんでした。
ソンドルが帰宅すると、ボンサムはケトンに「俺に土地を売ってほしいとは言わないが、ソンドルにだけは売らないで欲しい」と言います。
ケトンは「ユスに会わせて欲しい」と言います。
ユスに会ったケトンは、土地を寄付します。「馬房(マバン)にある学校を増築すると聞いたの。土地を寄付したい」と。御礼を言おうとするユスをケトンは止めます。「頭を下げないで!あなたに御礼を言われる資格なんてないの」
ケトンはボンサム、ユスが帰宅するのを見送ります。(私の人生の全てをかけて、誰かを愛する機会をくれたことに感謝しています。あなたとの過去は心の奥底にしまい込みます…)
マクボンとパンデは道端でソンドルに銃を発砲します。「あんたは日本と手を結び、朝鮮の民を苦しめる悪徳商人だ」
「何を言う。朝鮮の商業が大きく発展したのは一体誰のお陰だ」
「朝鮮商人の恥め!己の命でその罪を償うんだ!」
行商人の精神
ボンサムは馬房で行商人を育てる学校を運営していました。
生徒の一人がボンサムに聞きます。「これから鉄道ができたら、行商人はいなくなりますか?」
「そうだ。行商人が歩いて商いをしていた時代が終わり、新たに“機械”の時代が幕を開ける。だが、お前たちが行商人の子孫という事実は変わらない。我々の仲間、先祖は、千年もの長い間過酷な暮らしに泣き、笑い、汗をかき、商売を続けてきた、それが行商人の精神だ。商いで民を豊かにし、仲間と助け合い、物を流通させてきた、それが行商人の精神だ」
感想
客主視聴終了しました。長かった~!!最終話なので全話を振り返って感想です。
私欲しか考えていない人ばかりのこのドラマで、唯一どこまでもきれいな心を持ったチェ・ドリ。いくら大好きだからと言って、友人の為に〇ねるものなのでしょうか。いくら自分の死期が近いと言っても、絞首刑で〇ぬのは恐ろしかっただろうと思います(銃で撃たれた傷を我慢するのもつらいことだと思いますが、それが苦しいから〇にたいというわけではなく、ボンサムの為に命を差し出しました)。
ボンサムは、父親、姉、兄のように慕っていたソゲ、妻、20年来の親友のチェ・ドリ、恩師チョ・ソンジュンを失い、一時はボンサムへの復讐に燃えていたマンチ、マンチの部下だったコムべ、黄客主、ソリンの侍女のウォル、息子のユスが側に残りました。時代劇では主人公の身の周りの人間が揃って陰謀で亡くなっていくのは定番ですが、このドラマの主人公も同じく波乱に満ちた人生でした。
ケトンの愛については、このブログを読んでくださる皆様はどう思われますか?ボンサムが結婚しても運命の人だと信じ諦めない姿は、今の時代でしたら間違いなくストーカー扱いだと思うのですが、あんなにも一途に(?)ボンサムの為だけに何でもできるのは、最後はもはや脱帽としか言えません。いくら好きな人を生かしたいからと、ボンサムの親友に身代わりを持ち掛けたりと、普通の人間にはできないことを何度もしてのけます。ケトンのことが好きになれずでしたが、あんなにも人を愛することができたケトンは、報われない恋だったとしても、ある意味幸せだったのでは、とさえ感じます。
ケトンに何度も助けられたのは事実として、それでも、男の身なりをした人に願いを叶えて欲しいと言われて、約束を聞きに行ったら、女でした、結婚してください、と言われたボンサムが約束は果たせないと言うのは当然のことだと思うので、それで逆恨みされ付きまとわれたボンサムとしてはたまったものじゃない、と思いますが…(^-^;
鉄道建設で行商人が楽に商売をできると考えたらいいのに(ソゲの父が借金をしたのは、ユギジョンに入って、仲間に楽をさせたいという理由でした、足で歩き行商を続けるのは重労働です)、歩くことや今まで習慣に捕らわれすぎるのはどうなのかなと思いました。鉄道を使っても、仲間や民を想う精神を忘れなければそれでいいと思うのですが、大きく時代が変わる時は、新時代へ移行したい者と、これまでの世界観を守りたい者で、衝突していたのでしょうね。
客主52話のネタバレと感想でした。最後までお読みいただきありがとうございました☆